
生のお肉が食べたい!
目次
日本で肉の生食が厳しくなったあの事件・・・
2011年4月。
富山県、福井県などにおいて焼肉チェーン店を利用した人が腸管出血性大腸菌O111による食中毒を起こし、4名以上が死亡しました。
腸管出血性大腸菌O111による焼肉チェーン店での集団食中毒事件―富山県www.niid.go.jp
原因食品は焼肉店で提供されたユッケと焼肉(カルビ、ロース)であると考えられ、それ以降、国は急速に「肉の生食」に関する法規制を整備しました。
現在の日本での生食事情とは?
日本では、生食を食べる機会や、好む方が多いといわれています。
日本の生食文化の歴史は長いので、その理由は定かではありませんが、文化が根付いたのは日本の地理と衛生管理の高さが影響しているようです。
生食は細菌や寄生虫による食中毒の危険性が高いので、一般に避けられていますが、日本は海に囲まれ海に近く、衛生管理も意識が高いため、生食文化が根付き今でも生食文化が残っていると考えられています。

牛肉は条件が揃えば可能だが・・・
日常食べることが多い肉は、牛肉・豚肉・鶏肉があると思いますが、
その中でも「牛肉」だけは、日本全国広いエリアで生食で食べられています。
牛肉自体には、肥育環境や食べているものから、菌が肉に潜んでいる危険性は極めて低いとされています。
あの事件以降、厳しくはなりましたが、現在でも適切な処理をしてあれば生食が可能です。

その方法とは、
牛肉表面から1cm以上の内部を60℃2分間加熱し、表面に汚染している腸管出血性大腸菌O157やサルモネラなど病原菌を完全に死滅させ、その内部の肉の細菌検査により腸内細菌科菌群の汚染がないことを確認した生肉を食用にすることとなりました。
引用:東京顕微鏡院
つまり、生食用の処理をするには、多くの肉が必要になり、それも絶対生食で提供できるとは限らない。
結果、とてもコストと手間がかかり、金額も高くなることとなりました。
豚はゼッタイに生食ダメ!
豚肉は基本的に、生で食べようという発想すらなく、
安全面からも「生で食べては絶対ダメ」と言われています。
平成27年6月12日
厚生労働省から、食品衛生法に基づいて豚の肉や内臓を生食用として販売・提供することを禁止しました。
これは豚の肉や内臓を生で食べるとE型肝炎ウイルスや食中毒菌による重い食中毒が発生する危険があるからです。
調理する際には中心部までの加熱を意識しましょう!!

鳥刺しはいいの?
実は、鹿児島や宮崎のスーパーマーケットに行くと、高い確率で肉売り場や総菜コーナーに「鳥刺し」が並んでいます。
また、各地で居酒屋・通販などでも多く目にします。
鳥刺しのモモやムネなど、皮や表面は火が入っているものの、ほとんどタタキ状態で、中身は完全な生です。
とはいえ、牛、豚、鳥などの生肉を食べると食中毒のリスクがあるのは周知の事実です。
特に、鶏肉はカンピロバクターによる食中毒が度々問題視されています。
実は、鶏肉に関して、国は生食を許可はしていません。
ですが、その反対に「禁止」もしていない状態です。
前述の鹿児島や宮崎などの地域では、独自の衛生基準を定めて、鶏肉の生食による食中毒発生の対策をしています。
「生食用食鳥肉等の安全確保について」と題し
・食鳥処理場における加工
・飲食店等における処理や調理
・冷却温度
・保存や運搬
などを、徹底しているそうです。
そのうえで、生食による食中毒のリスクが高いことを、販売者が表示するよう指導し、子どもや高齢者など、食中毒に対する抵抗力が弱い人は生食を控えるよう注意喚起しています。

そのため、現地の信頼できるお店であれば、比較的安心して鳥刺しを食べることが可能かと思いますが、
逆に、どこでも大丈夫、と油断していると重大な事故につながる可能性があります。
馬刺しだけが唯一の・・・・
今、馬刺しはお肉好きや生肉が食べたいという方たちの間で注目されています!!
馬刺しは現在、唯一、
国内で比較的手軽に、かつ安全に生食できるお肉です。
また、タンパク質・鉄分・ビタミンやミネラルも豊富で、
美容や健康・ダイエットに気をつけたい方にもおすすめです。
調理法も馬刺しに限らずいろいろなバリエーションがあり幅広い種類の飲み物にも合わせられるのが特徴です!
馬肉が生で食べられる理由
それは、
・馬の特性によるもの
・国の基準による管理
があります。
馬の特性によるもの
(1)体温が高いため、食中毒菌が繁殖しにくい
体温が牛などよりも5度ほど高い馬は、カンピロバクターやサルモネラ属菌・腸管出血性大腸菌など食虫毒の原因となる雑菌が増殖しにくいとされています。
(2)口蹄疫にならない種族
口蹄疫とは、蹄(ひずめ)が偶数に割れている動物がかかる家畜伝染病の1つで人に感染する可能性があります。
馬は蹄が分かれていないためこの口蹄疫にかかることがありません。
(3)反芻動物ではない
反芻動物とは、胃を複数持っていて、食べた食物が、その胃を行ったり来たりする動物のことです。
反芻動物は、O157などの腸管出血性大腸菌を保菌しているケースがあります。
馬は、反芻動物ではないので、そのリスクが低いと言えます。
国の基準による管理
馬肉にも食中毒のリスクはゼロではありません。
馬肉にはザルコシスティス・フェアリーという寄生虫による食中毒の可能性があります。
食肉とともに大量に食べてしまったとしたら嘔吐や下痢などの軽い食中毒が現れることがあります。
この寄生虫は中心の温度をマイナス20度で48時間以上冷凍することで死滅させられます。
そのため、馬刺し用に精肉された馬肉は、必ず上記の処理を義務付けられていています。
以上が、馬肉を安全に食べることができる理由となります。

まとめ
- 牛肉を生食で食べることは可能だが、大きなコストと手間がかかる
- 牛のレバーを生で食べるのは完全に禁止されている
- 豚肉は生食をしては絶対にダメ
- 鶏肉は、原則的に生食はダメ
- 鶏肉は、地域によって独自の基準で生食を提供している
- 馬肉は、種族の特性で、食中毒が発生しにくいため、生食が認められている。
- 馬肉は、レバーも生食が可能な、日本で唯一のお肉